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Manic Monday

2021-05-01 Sat : 未分類 
Manic Monday

前にプリンスのデートでDJをしたWally Waves氏の記事を訳しましたが、今回はそれの続きです。記事元はこちら
最初のストーリー「Purple Tuesday」はこちら



「ザ・パープル・ワンが戻ってきたぜ。君が今夜のDJをしてくれるか知りたいそうだ」

「なんだって!?あぁ今2時間くらい離れた砂漠にいるんだけど車で戻ってくるよ。何時に行けばいい?」

「彼のアシスタントに聞いておくよ。まだ決定ではないんだけど君ができるっていうことを伝えておくよ。何時から始まるのか詳しい情報を待っているところだ。まだバーを貸し切りにしてないからね」

「問題ありませんと彼らに伝えて。わかったらすぐ連絡をくれ」

私は問答無用で車でLAに戻るべきだった。あるいはパームスプリングスを出発する最初の便を取るべきだった。

アウトキャスト(アメリカのヒップホップデュオ)は10年以上ぶりの再結成だったが、彼らはもっとショーを行うだろう。プリンスのためにDJすることは完全に1回限りの契約だった。もしかしたらこの電話で2回になるかもしれない。

しかし私は待つことにした。そして「ザ・パープル・ワン」はすぐにそのフェスの出演者の影を薄くさせた。電話の電波が悪いことが多いので常に接続を確認していた。2時間くらい経ってもメッセージはこない。アンドレ3000とビック・ボーイのステージには何千もの観客が集まり、私は必要に応じてすぐに会場を出られるように後ろの方にいた。

アンドレ3000は演奏の途中で観客に話しかけていた。そしてVIPエリアにいる誰かに軽く声をかけていた。それはプリンスだった。待って、プリンスがここにいるのか?そうかもし彼がショーの後LAに戻ってパーティをしたいと言ったら、私は高速道路をたたき割って彼が戻るのを阻止するだろう。あなたがプリンスだったらするであろう紫のヘリコプターで街から街へ移動した場合を除いて。

その日の夜も次の日もDJの依頼は来なかったが、週末までいつでもすぐ向かえるようにした。しばらくは砂漠で安全にシラフで過ごすことにした。

日曜日にホテルの連絡先からメールが来た。月曜の午後プリンスが私にDJをしてほしいと言ってきた。ビジネスミーティングのためにだ。意味がわからなかったがすぐに「やります」と答えた。ラベンダー色のビジネスウエアを纏ったプリンスがパワーポイントをクリックする姿を思い浮かべた。この会議で何の曲を流せばいいのだろう。エレベーターの中で流すような心地いい音楽?変なものはダメだ。彼はビジネスをしなくてはならないのだから。

その夜遅くにいくつかの詳細が入ってきた。
「午後2時にセットアップ、スタートは2時半。ミキサーに繋げるCDプレーヤーを持ってきて来てください。何か問題があったら、連絡してください」

フェス後の日曜の夜、私は「ビジネスプレイリスト」を作るために最善を尽くした。最小限のボーカル、スムーズなサウンド、リラックスした雰囲気の曲を集めた。そう、わたしは静かなBGMを基本的に持って行った。月曜の朝、砂漠から戻る車の中で曲を集めつづけた。何時間もかけてこの会議に最高のビートを提供する準備をした。

午後2時近くにホテルに到着した。またピアノの上に機材を置いた。今回はすべての窓に暗幕が張られている。中に入るとプリンスのスタッフが私を迎えてくれた。

「で、あなたは今日何をするのかわかってる?」

「はい。私はビジネスミーティングのためのBGMをプレイするようにと聞いています」

「いや、あなたはレーベルのためにプリンスの新しいアルバムをかけるのです。CDプレーヤーを持ってきてるよね?」

「ええ、すぐ繋げます」

「15分後に彼は来て、あなたと一緒にサウンドチェックをするわ」

わかった、ビジネスプレイリストは窓から捨てよう。私はこのCDプレーヤーがちゃんと動くことを祈っていた。私は10年以上CDプレーヤーを持っていなかったので、バーで借りてきたのだ。今朝寄ってきたBest Buyでは見つけられなかったし、私のノートPCにもなかったからだ。このバーのCDプレーヤーがCD-Rを読み込みなかったらどうしよう。昔のテクノロジーに頼っていたので、リスクは高かった。

その男は時計の針のように15分後に現れ、「ハロー」を言って焼いたCDを手渡してくれた。そのCDには細い油性ペンで高校生が描いたみたいにプリンスのシンボルマークがびっしり描かれてあった。

「6曲目を再生してくれ」

「はい、トラック・・6と・・」

CDプレーヤーは何度か回転して読み込んだ後、ディスプレイに「01」と表示された。CDの神様に感謝!6曲名を選んで再生ボタンを押すと、最初の数回のドラムキックでそれば何かわかった。彼は私に大きくするように言った。Breakfast Can Waitがスピーカーから鳴り響いた。寝ていたホテルの客を起こしたかもしれない。そして彼は私にミーティングテーブルの傍でサウンドレベルを確認するように言った。

「この音はどう?」

「えーと少し低音が欲しいと思います」

「もっと低音ね、そうだな、音を大きくしよう」

私は低音を出しすぎたかもしれないと思ったが、何も言うつもりはなかった。私は彼と一緒に部屋の真ん中で、そのビートに乗って頭が動くのを止められなかった。彼は私に曲の最初で一時停止させた。

「彼らはもうすぐ来るよ。再生ボタンを押すタイミングを教えるよ」

彼は2人の紳士が入ってきて握手するまで、2、3分テーブルに座っていた。短い会話の後、プリンスは私に向かって叫んだ。

「ヘイDJ!再生を押して」

そこで私はトラック6番を大音量でかけ、それが終わるとプリンスは私に向かって合図した。

「帰りたかったら帰っていいよ」

つまり私とこの2人のレーベルの人以外には新しいアルバムを誰にも聞かせたくないから消えてくれという意味だ。私はそこを離れて、何か呼ばれた時のためにドアのすぐ外にあり椅子に座った。彼のアシスタントも外にいて電話で何かの仕事をしていた。彼女は電話を切ると私に話しかけてきた。

「ねぇ、プリンスは気に入らないDJにはそのことを伝えるのよ」

「あぁ・・そうですか」

どういう意味?私はプリンスが気に入らないDJに何をするのか知りたかったが、聞かなかった。

「彼は前にあなたがDJしたときすごく気に入ってたわ」

「本当?それは素晴らしい」

「そうよ だから彼は町に来て誰かを必要とするときは、私たちはあなだの番号を知っているからね。あなたはホテルでDJするだけなの?」

なんてこった!これはうまく言わなきゃならない。

「いえ、ここではプライベートパーティだけだけど、いろんなところでDJします。私はいつでも準備万端ですよ」

ホテルでのプライベートパーティとは実はこの2つのプリンスのギグだけだった。準備万端とは愛する人の葬儀でもない限り何をしていてもすぐに駆けつけられると言う意味だ。ツアーに出る準備もできていた。プリンスは私をツアーに誘ってくれるかな。

「OKそれならよかった」

彼女は電話に戻ってさらなるプリンスのアドベンチャーの計画を練っていた。繰り返されたり止められたりした曲が壁越しにくもって聞こえてきた。たぶんプリンスは私の機材でDJをしてたと思う。何時間も経った。ありがたいことに待っていたスタッフの誰かがハンバーガーを持ってきてくれた。

午後7時、5時間が経とうとしていたころ、2人のレーベルの人達がようやく部屋から出て行った。私が部屋に入るとプリンスがCDプレーヤーを見ていた。私は取り出しボタンを押して彼のCDを手渡した。

「ありがとう」

そして2人のセキュリティガードに挟まれて去って行き、アシスタントが私のところに来た。

「今までで一番簡単なDJの仕事だったんじゃない?」

「えぇ、悪くないね」

「OKではこれで終わり。今日の仕事は終わりよ。ありがとう」

私は全てのプラグを抜き、ターンテーブルやミキサー、他の機材を車に積み込んだ。車で家に戻り、着ていたスーツとネクタイを含めて全てを床に投げ捨てた。週末の砂漠での疲れがたまって寝たかったのだ。

‥‥

眠り始めて10分後、電話が鳴った。

「ヘイホテルに戻ってきてくれない?彼は今夜のパーティでDJしてほしいって」

「えっ!はい、もちろんです 断ることなんかできません」

私は全てを車にまた積み込み、ホテルへ急いで向かった。バーでは見慣れたセットでそこかしこにキャンドルが置かれ、たくさんの料理が並んでいた。私はCDプレーヤーを含めて全てあの日の午後の状態に戻した。そうこうしているうちに30分くらいでプリンスと彼のスタッフが来た。

プリンスがあのミーティングのCDを持ってやってきて流すように言った。私は実際にDJをする準備をしていたが、どうやらその日2回目の再生ボタンを押すだけになりそうだ。新しいアルバムが再生されてまた部屋を追い出されるかと思ったけど、そんなことにならなかった。アルバム全部聞いてとても気に入った。何度もそのアルバムを再生した後、プリンスはCDを返してほしいと言って、私にリクエストした。

「何かメロウな曲をかけてくれ」

「えぇ、わかりました」

ウィリアム・デヴォーンの「Be Thankful for What You Got」から始めた。できるかぎりリラックスした雰囲気だ。その雰囲気のまま進めていたが、ジャンルはニーナ・シモンからセルジュ・ゲンズプールまで飛び越えてボサノバもミックスに加えた。みんな楽しそうに祝ったり笑ったりしていた。プリンスが「イルマティックよりスティルマティックの方がいい」と大きな声で言ってたのを覚えている。するとプリンスのアシスタントが私のところへ来た。

「ねぇ、あのCDをあなたのPCに保存してないよね?」

「はい、していません。信じてください。絶対にそんなことしません」

「OK よかった ちょっと聞いただけ 彼は本当に慎重だから」

私は自分の置かれている状況を理解してすごく慎重になっていたと思う。絶対にリスクを負うことはしたくなかった。

ミックスはメロウなものからファンキーになり午前1時を過ぎていた。
まもなくプリンスが立ち上がり「ありがとう」、「あと15分でみんなここを出るよ」と言った。私はひょっとしてプリンスの人生は全部15分単位で決定しているのではないかと思い始めた。

みんなが出て行った後、私は機材を片付けるかどうか迷った。朝になればまた呼ばれるかもしれないと思った。そう、私は朝食のDJをするのだ。それかブランチ。こんな訳のわからないことを考えていたので、自分はいつでも呼び出されると思っていた。



セットリストはこちら ミックスがM-XCLOUDで聞けます。

Prince - Art Official Age LP

William DeVaughn - Be Thankful For What You Got
Quincy Jones - Summer In The City
DJ Rogers - Bail Out
Lalo Schifrin - No More Lies, Girl
Thievery Corporation - Claridad ft Natalia Clavier
Ramsey Lewis - Sexy Sadie
Barry White - Playing Your Game, Baby
Al Green - I’m Glad You’re Mine
Sylvia - Sweet Stuff
Nina Simone - Baltimore
Diana & King Storm - Love Hangover
Caterina Valente - Canto De Ossanha
The Pharcyde - Otha Fish (Instrumental)
Erykah Badu - Gone Baby, Don’t Be Long
The Isley Brothers - Footsteps In The Dark
Uyama Hiroto - Ribbon In The Sea
Timothy McNealy - Sagittarius Black
Afrique - House Of Rising Funk
St Etienne - Filthy ft Q-Tee
Serge Gainsbourg - Bonnie And Clyde
Dennis Bovell - Jazterpiece (The Dope As Funk Extra Dread Edit)
Jazz Liberatorz - Always Something
Pete Rock - Get Involved
Jazzanova - Another New Day (Stereolab Remix)
Lovage - Koala’s Lament
Bill Withers - Grandma’s Hands



Wally氏 2回もプリンスに呼ばれてよかったですね。しかも今回はまじまじとプリンスを見られたかもしれません。
プリンスのツアーに行ったDJ RASHIDAにヤキモチ焼いたかもしれませんね。
ミックスはまったり日曜の昼下がりって感じがしてとても好きです。まさにGWの今にピッタリ。
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